第50章 大正“浪漫”ー弐ー
お館様は私より年下で、私はそのイメージに引っ張られていたけれど、そんなこと関係ないほどの重荷を背負っていたことを。
私は彼が死ぬときまで気づかなかった。
「それでは本題に入るよ。もう入ってきて良いよ。」
お館様が奥の襖に声を投げる。
来た。
私は少し緊張してきて、ぎゅっと拳を握りしめた。
「………。」
すっと開いた襖から、包帯を巻き付けた虚ろな目をした細身の小さな男の子が姿を現した。
私は、始めてその姿を見たときにこう思ったのです。
ああ、何と、何にもない少年だろう。
「彼は時透無一郎。始まりの呼吸を使っていた剣士の末裔なんだ。」
お館様が言う。彼はぼおっと突っ立っていたが、お嬢様たちに連れられ私の正面に座った。
青い目が私を見つめた。まるで、心臓を鷲掴みにされた気分だった。
「………末裔…」
桜くんは“秘密”と書き残した。ならば、私もそういうことになる。始まりの剣士のうち一人。霧雨阿国の子孫は私だ。そして、無一郎くんは継国巌勝の子孫にあたる。
お館様が無一郎くんについて話す。
一度聞いたことのある話。
一度経験したこの時間。
私はだんだんとこの状況を受け入れつつあった。
「、君にこの子を頼みたい。継子として面倒を見てほしいんだ。」
お館様が言う。
私はじっと青い目を見つめた。
「お断りします。」
今後の展開がわかっているので私はそう言った。
私はそこで立ち上がり、部屋から出ていこうとした。
するとぐっと後ろから引っ張られた。
「何です?」
無一郎くんが私の隊服を引っ張っていた。小さな手だった。大きな目は幼さを強調している。
「お願いします。僕は鬼殺隊になりたいんです。」
そこには、やはりはっきりとした意思があった。
けれど、鬼への恨みだけがその小さな体の奥底にある。
「勝手にどうぞ。」
私はそのまま本当にその部屋を出た。
だけれど、無一郎くんは私の隊服をまだ引っ張っていた。
「お館様、なぜ私なのですか。」
始まりの剣士の末裔どうし、仲良くやれと言うのか。
「無一郎は、に必要な存在だと思ったからだよ。」
お館様が微笑んだ。