第50章 大正“浪漫”ー弐ー
「あなたのためです。」
…。
この会話…。
そうだ。私、本当に前世でこの会話をした。桜くんのお父さんと話した。
「鬼のために泣く人がいるからです。私の命など、それには釣り合いません。」
私がそう言うと、桜くんのお父さんはうつむいた。
「ハカナは、死んで一人あの世で泣くハルナが可哀想だと言った。そう言って、家を出た。すぐ帰ってくると思った。でも帰ってくることはなかった。」
私は黙って聞いていた。
「ハカナも、あんたと同じ顔をしていた。」
そこで、涙声になって嗚咽が聞こえた。
……私にも、まだそんな気持ちがあるのだろうか。この頃の私は、鬼殺に疲れ果てていた。志は変わらなかったが、心の底ではそうだった。
私は夕方ごろに自分の屋敷に帰った。
畳の上に寝転ぶ。
「………鬼に泣く人のために…」
最初は、鬼殺隊に入らざるを得なくて。鬼で泣く人たちを見て。そのうち、大切な仲間が増えて。その仲間たちが死んでいって。
鬼に、泣く人。
皆泣いてる。悲しんでる怒ってる。
……記憶のない無一郎くんもそうだった。
あの子も、鬼に泣く一人。
私はあの子のために闘っている。
…。
「私は正しい選択をしているの?」
天井に声を投げた。
「答えてよ。誰か、教えてよ…。」
私はため息をついた。