第49章 大正“浪漫”
「もう無理!!負けそうーッ!!!」
とはいえ、私は半泣きだった。
いざ夜になって鬼を前にすると、いくら前世を覚えているとはいえめちゃくちゃ怖い。
「ガラスーッ!!!」
「アホか!!何逃げてんだよ!!さっさと斬れよそんな雑魚鬼!!」
「だ、だってあんなに怖いんだよ!?鬼だよ!?普通逃げるよー!!」
「何言ってんだ!昨日までばっさばっさ斬ってたろうがッ!!」
「昨日の私は今日の私じゃない!私は常に進化してるんだから!!!パワーアップしてるの!!!」
「ぱわぁあっぷ?…ってほら来てんだろ!!はやくしろ!!」
鬼がすぐそこまで来ていた。
いや、そもそもさ。
「ねえガラス~!か、刀!!刀抜けないぃー!!」
「はあ!?アマモリが打った刀だからだぞ!?」
「えっ何それ」
「引っかけだよ!!小手先しか取り柄のないやつめ!!」
「あ、あー!思い出した!!」
私はずざっと立ち止まり、鬼を振り返った。
意識を集中させて刀を抜く。ちょっとした引っかけ…ストッパーみたいなのがあって、それを刀の角度を変えてガチッと音を立てないと抜けない仕組みになっていた。
何でこんなことになっているかというと、アマモリくんの単なる遊び心である。私が最初に使っている刀は錆びるに錆びていてコツをつかまないと抜けなかった。それを面白いと思って勝手に引っかけをつけられたのだ。
覚えててよかった!
「霞の呼吸、参ノ型…!!」
そこからはすぐだった。
何とかなったからいいけれど、どうも忘れていることが多いらしい。
私、この世界で生きていけるのかな…。