第49章 大正“浪漫”
青い空がオレンジ色になった。
私はぎゅっと膝を抱えて、墓石の前にうずくまっていた。
「おい、もう帰るぞ」
ガラスがつつく。
私はうつむいたままそこにいた。
帰ると言っても、あれは私の家ではないし、このままなら私は…。
鬼殺隊の任務が待っている。それに、二ヶ月後には黒死牟に殺される。
何でこんな時にやって来ちゃったかなぁ。バカでしょ。
「俺は行くぞ。」
ガラスは呆れたように翼を広げ、行ってしまった。
私はそれでようやく腰を上げた。
墓を振り返った。
「……ゆびきりげんまん」
私は小指を墓石に差し出した。
こんなことになっちゃったけど、約束したから。
私、負けないよ。
『うん、頑張れ』
そう聞こえた気がして、ふと墓石を見上げた。
優鈴はいない。ただ、風が吹いた。
穏やかで吹き抜けたそれは、優鈴の風に似ていた。