第49章 大正“浪漫”
私は半ばパニックだが状況を理解しつつあった。
私は…死んだ…のか、死んでないのかはわからないけどとりあえず眠ってる。
それで夢か幻かわからないけれど、こうして大正時代に来ている。
それでいて、大正時代の私と令和時代の私は当然違うわけで。
「気でも狂ったか。」
ガラスはそう言った。
「アホか。柱合会議を無断欠席だなんてどうかしている。風柱が死んだ時に悔い改めたのではないのか。」
墓石の上に止まって、ぐちぐちと何かを言っている。私は墓石の前にちょこんと座り込み、ぼおっと空を見上げていた。
「何となく来ちゃった…」
この状況で参加できるはずもなく。何より、このままでは無一郎くんを連れ帰ることになる。
……あの子は…。
死んでしまう。鬼殺隊として、責務を全うして、誇り高く死んでいく。
私はそれを受け入れられない。多分前世の私なら受け入れた。けれど、今の私は平和な世界でぬくぬくと育った私だ。そんなに強くない。
「何となくで許されるものか。」
「いいよ、どうせ嫌われてるし。」
私は苦笑した。
「なぜ木谷優鈴の墓に?」
「確か、この頃は墓参りなんてしてなかったなあって…。」
「何を訳のわからないことを言ってるんだ。」
ガラスは居心地がよさそうに墓石の上にいた。
『よく喋るし可愛いねぇ』
優鈴、可愛がってたからな。
大切な仲間だったのに、だんだん私は墓参りなんてしなくなった。思い出してしまうから。あのふにゃっと笑う顔を思い出して、苦しくなってしまうから。
「優鈴~…どうしよ、私負けちゃったのかなぁ~」
不謹慎と怒られそうだが墓石にもたれかかった。
ゆびきりげんまんで約束をした。元気になったらおいしいもの奢ってくれるって…。最後に見たしょんぼりした、あの顔を思い出した。
私、本当に大丈夫なんだよね?
そうして見上げた空は、令和時代と変わらず澄んでいて青かった。