第49章 大正“浪漫”
これは夢なのだろうか。
それにしては意識がはっきりしているような…。
「何を叫んでいる」
「ぎゃあっ!!」
後ろから声がして振り返ると、烏がいた。喋ってることに驚いたのだが、思えばこの時はそれが当たり前だった。
しばらく放心していると、次第に驚きより懐かしさが勝ってきた。
「烏~ッ!すっごい久しぶり!!」
「何だ。俺の名前は烏じゃない。ガラスだ。」
「わッ!その感じとっても懐かしい!!そうだそうだ~ガラスだっ!!」
私の元にやってきた頃、この鎹烏には名前がなかった。何となく語彙が似ているガラスという名前をつけたんだ。今思えば適当すぎる。本当にごめん。
見た目は他の烏と変わらないけど、やたらと話すのが上手で人間と大差ないのが私の相棒、ガラスだ。
「いやぁ、また会えるとは思わなかった!元気してる?」
「はあ?何言ってんだ。」
「すてきな夢だなあ。」
ガラスはしばらく黙ったあと、なぜか勢いよく私の額をくちばしでつついた。
「いたッ!!!ちょっと何すんの!?」
「夢とかぬかすからだ。これでわかったか?現実だぞ。」
「え」
……そういえば。
夢なのに痛いって変だな…。
「今日は様子がおかしいぞ。どうした?」
「え」
「いつもはニコニコ笑って話し方も丁寧じゃないか。何だそのちゃらんぽらんな話し方とたるんだ顔は。」
ガラスがチクチクと刺のある物言いをする。
「ね、ねぇ、ガラス。今は…その、今日は何年の何月何日?」
「はあ?お前寝惚けてるのか?夢の続きは夜に見ろよ。」
それでもガラスは答えてくれた。
それを聞いて、私はぎょっとした。
「えっ!えっ!えぇっ!」
「気は済んだか?今日は柱合会議だ。遅れるなよ。」
忘れもしない日だった。この日、私は柱合会議に行って。それが終わったと同時にお館様に呼び出されて。
「……無一郎くんと会う日だった気がする…」
曖昧だが、ぼんやりとそのことを覚えていた。