第49章 大正“浪漫”
私は目を覚ました。
「?」
体を起こすと、そこは畳の部屋で、ふっくらとした敷き布団で私は眠っていた。
「えっ、なにこれ」
声が出た。
私は体を見下ろした。
……え、なにこれ、着物?…えーっと、着流し?…和風パジャマってか?
「…この部屋……まさか…」
私は飛び起きた。元気よく走って、障子を開けた。
目の前に広がる青空。少し広い庭。縁側の廊下。解放感のある空間。どこか懐かしいその場所。
「はっ!?」
私は裸足のまま庭に降りた。
庭を歩くと、門があって、そこから外に出た。
あたりには何もない自然豊かな田舎風景。まず、令和時代にはない光景。
遠くの田んぼでかごを背負った着物姿のおばあさんが作業をしているのが見えた。
私は屋敷の中に戻った。
部屋の、すっかり埃をかぶった鏡を覗き込む。
「……」
少し傷のある顔。痩せているが筋肉が見える体。
間違いない。
「ええええええええええええええーーーーーーーっ!!!!!!」
私、霧雨。
どうやら前世の大正時代に来てしまったらしい…。