第48章 空模様
結局そのまま眠らず、ただぼおっとして実弥の寝顔を眺めていた。
「俺は何の拷問を受けてるんだァ?」
朝になって健康的な時間に目を覚ましたかと思えば、開口一番にそう言われた。
「ふん、これで着る服がなかろう。」
昨夜Tシャツを拝借したので困りに困るだろうと思っていた。
「お前、自分が今どんだけのことやってるか自覚あんのか」
「えっそんなにイヤ?」
「うるせェ」
実弥は大きく息を吐いて、左手を布団について起き上がった。
「あ?」
その時違和感を覚えたらしい。
左手をまじまじと見つめて……。
「……………ぁ…?」
寝ぼけ眼が覚醒していく。
そして、寝転んでにやにやしている私に気づいたらしい。
「は?お前…」
「お気に召しました?」
左手の薬指に指輪があった。
控えめに小さな宝石。装飾に入っている指輪の線が、ほんのり緑色。
「実弥っぽいな~って思ってそれにした」
緑色。
それは、実弥の色。
実弥が放心状態でじいっとそれを眺めているのが可愛くて、眼福…と見つめていると、圧迫感に襲われた。
「……あんがと…」
実弥がぎゅうう、と抱きついてきた。
力加減をして痛くないようにしているところがまた可愛い。
「仕事してるときは外すんだよ。」
「ん。」
「なくさないでね。」
「ん…。」
実弥が額に頬をすり寄せてくる。
「……可愛い…おはぎそっくり…」
「可愛いのはお前だバカタレ」
その日の午前中は、実弥とただくっついて、どうでもいいことを話していた。
お昼の時間になるとおはぎが乱入してきて、中断することになったので実弥がすごくイヤそうな顔をした。