第48章 空模様
目を覚ました。
夢の中で味わったものが確かに口の中にある。
気持ち悪い。いつものごとくあんまし覚えていないけど、何食べてたんだろ。
けれど、よくよく落ち着いてみれば口の中は穏やかだった。そりゃそうか。夢だもん。
むくりと起き上がる。ぱさりと布団が落ちた。ふわあ、と大きなアクビ。眠い。まだまだ夜じゃん。
何だかスースーするなあ、と思えば何も身に付けていなかった。
あれ、と寝ぼけた頭で考えると、寝る前のことを思い出して隣で寝ている実弥を殴ろう…として、やめた。
めっちゃ良い顔で寝てやがる。私と悲鳴嶼先輩の話をちょっと聞いて、ヤキモキしてたくせにこの野郎。
とりあえずやり返しのつもりで実弥のTシャツをつかんで上から着た。
てくてくと歩いて自分の部屋に戻る。
……………。
「全然、ロマンチックじゃないけど、何か落ち込んでるみたいだし…」
棚にしまいこんだそれを取り出し、ボソッと言った。
「よし」
私はそれをぎゅっと握り、実弥の部屋に戻った。