第46章 障壁
その時、私は背後から気配を感じた。
「こんちは」
「うむ」
そして職場の先輩に律儀に挨拶をする。
「では、これで。不死川、あまり目を離すなよ。」
「……お前、またか。」
「フレンドリーな人が…」
「急げってメッセージはそれか。」
実弥が呆れて言う。
彼が来たのを見届けて、先輩は去っていった。
「中入るかァ」
実弥が植物園の入り口に向かって歩きだす。
「待って実弥」
「あ?何だ?手か?」
実弥が右手を差し出す。いや違うし。
まあ繋ぎますけど。
「…何ですぐ来なかったの?」
「ア?メッセージ送ったろ。こんでたんだよ。」
「………嘘、つくんだね。」
本当は知っていた。
実弥が実は私達を見ていたことを。
それなのに、いかにも会話の区切りがついたところで姿を現したことを。
「……あー…話してたから…」
「………」
嘘はわかる。全部お見通し。
「フンッ」
「お、おい」
私はグッと実弥の手を引っ張って前に進んだ。
「私だって嘘つく時あるし、怒ってないよ。」
「…。」
「まあ、何考えてたかはわか…っちゃう、ので。」
私は実弥を振り向いた。
「ごめんね、実弥。不安になった?」
悲鳴嶼先輩との前世での関係は、はっきりとは言っていないけど、粂野さんが言ってくれたおかげで何となく察しちゃったみたいだし。
「バカ野郎、めちゃくちゃ焦ったわ」
実弥がため息まじりに言って、真っ赤になるので私は人目も気にせず抱きついてやった。
バッチリ怒られました。