第46章 障壁
実弥に勝てない。
前世はどうやって実弥に勝ってたんだろう。こてんぱんにやっつけてたのに。悔しい。くそっ。くそくそくそっ。
「…美味いか?」
実弥が控えめに聞いてくる。
私が食べているケーキを言っているのだろう。
「美味しいよ。」
「そうか。」
実弥はホッとしたように顔を緩めた。
……さすがに、ずっとむすっとしてるのも申し訳ない…。っていうのが実弥に甘いところよね!!私!!
「はぁあ、実弥には勝てないなぁ…。」
「ん?」
実弥が首をかしげる。
「いつも俺がお前に負けてるけど。」
そう言うので、私は何だかまた負けそうになった。
私はベンチを座ってソフトクリームを食べていた。
実弥は車をとめている。
先ほどケーキを食べたカフェの近くにある植物園の花が綺麗だとネットで見たので、そこに来た。
駐車場からソフトクリームの看板が見えたので、食べたいと言うとそこまで遠いから車をとめている間に食べてこいと言われた。
二人でお出かけしているのになぜ私は一人でソフトクリームをペロペロしているのだろう。実弥くん、こういうところですぞ。
「あの、すみません、隣良いですか」
一人寂しくソフトクリームを堪能していると、男の人からそう声をかけられたので頷いて横にずれた。
何だかかっちりした人だなぁと思って横目で見る。…実弥はやく来ないかなぁ。
スマホで『まだ?』とメッセージを送ると『こんでるから』と素っ気なく一言。
『急いで』
と、送った。
隣の人から嫌な気配がする。
「あの、一人ですか」
「……いえ、一人じゃないです」
…声かけてきた。嫌だな、実弥はやく。ハリアップ。私知らない人と話すの苦手なんだよ。
「友達来ないんですか?ていうかいないですよね。」
「すぐ来ます。」
「ふうん。嘘つくんですか。」
いや、本当のことです。
「ねぇ、奢るから一緒に回りませんか。」
「…大丈夫です。」
え?知らない人と植物園でお花を見る?ムリムリムリ会話続かないよ…。