第46章 障壁
「許さないんだから」
私がぎろりと睨むと、実弥は何だかご機嫌で満足げだ。
「待ってって言った」
「待て待てでそのまま寝ちまうじゃねえか」
実弥が起き上がる。
……くそ、筋肉ムキムキなのが腹立つ。とりあえず背中に枕投げておいた。
「あー…馬鹿ほんっと馬鹿」
「おら、拗ねんなって」
実弥はポンポンと頭を撫でる。
…そんなんじゃ許さないんだから。
「実弥くん」
「あ?」
「おいしいコーヒーが飲みたいです」
「ハイハイ、いれてくる」
「あと、久しぶりにお出かけしたいです。」
「わかった。今日は一日お前の言うこときくよ。」
「あったりまえだ~い……!!」
私は力なくぺちん、と実弥の背中を叩いた。
力が入らない。あぁこのくそやろう。
実弥のいれた美味しいコーヒーを飲んで、彼の運転で遠くに出かけた。
「どこに行くかねェ。」
「甘い物食べる!!実弥が吐くくらいクリーム乗ってる甘いやつ食べるの!!」
「何でだよ」
「私だけ実弥に嫌な思いさせられてるのムカつくんだもん!!やり返したいんだもん!!実弥は一回とてつもない苦しみを味わえば良いッ……!!!」
私が拳を握り締めて言うと、赤信号で車が止まる。
「…悪い…嫌な思いさせるつもりはなかった。反省する。」
しゅん、とした声で言われた。
………。
ああもう。
「嫌いだ~…そういうとこ大好きで嫌いだよ……」
「あァ………?悪かったよ、パンケーキでもミルフィーユでも食うから、機嫌直してくれよ…。」
実弥が必死そうに優しく言うので、私は何だか罪悪感に襲われた。ごめん。