第46章 障壁
完璧にタイミングを逃した。
寝てしまったせいで指輪を渡すタイミングを見失った。
それに加えて明日が休みだからか実弥くん全然眠らないし起きたままなんですけど。
あ~ダメだ~あの笑顔にほだされてまた一緒に布団に入ってる~隙を見て指輪取りに行くこともできない~。
天井をにらんでも何も起こらない。実弥も横で目をぱっちり開けてるし。助けて。
「なあ」
「何でしょう」
「何か違う」
「は?」
実弥がもぞもぞと動く。
あ、寝るポジション定まらないってこと?
右向いたり左向いたりせわしなく動く。
「んー」
「え」
そしてついには天井を見上げていた私までゴロゴロと転がした。
反転、一回転、グルグルグル。
「ん」
そして満足したと言わんばかりに軽く声を出した。
私が右を向いて実弥が右を向く。そしていつものごとく後ろから手を回してお腹を触る。
「実弥くん」
「何だよ」
「何これ」
「これが落ち着く」
「実弥ってたまーに馬鹿じゃない?」
実弥はぎゅっと力を込めてくる。
「馬鹿で良いね。はあー…。」
実弥がため息をつく。
「疲れてる?」
「当たり前だ。クタクタだ。」
嘘じゃない。すごく気だるげな雰囲気。ちゃんと感じられる。
「じゃあゆっくり寝たらどう?」
「ゆっくりしてる。」
「だから、私にかまったりしないでゆっくり寝たら~って言ってるの。」
私が腕から抜け出そうとすると、すっとお腹の手が動いた。その時、気配に気づいて慌てて振り返った。
「……実弥くん」
「悪い。」
いや微塵も思ってないでしょ。
「いや、ちょっ、ま「待たない」」
疲れているなんて嘘じゃないの。
私はそう思いながら長い長い夜を過ごした。