第46章 障壁
嬉しい。
側にいてくれて嬉しい。ありがとうありがとう。
でも。
とっても悲しい……。
目が熱い。
そう思えば、なぜか涙が出た。
目から落ちる前に、そっと大きなゴツゴツとした指で拭かれた。おや、と思って目を開けると真上に実弥の顔があった。
「」
ごし、と目元をなぞる。
「夢でも見てたのかァ?」
「………うん…」
またあの夢だ。
少し悲しい内容だったな。何だろう、阿国さん…初恋の人じゃなくて他の人と結ばれたのか。でも幸せそうだった。
ボーッとした頭で夢を思い返していると、おかしいことが起こっていることに気がついた。
「あれ?実弥、何でいるの?」
「あ?仕事終わったからだよ。」
「え、こんなにはやく?」
「はァ?もう九時だぞ。」
「えッ!?」
私がゴロゴロとフローリングに寝転がっていたのは多分五時とかだった。
マジか…。
「やだもう、めっちゃ寝てたぁ…」
「あー、すやすや寝てたなぁ。」
私が寝転んでいた横で実弥が胡座をかいて座っていた。まだスーツ姿だし、鞄もソファに置いてあって、帰宅してから放置しているらしい。
「何で起こしてくれなかったの」
むすっとして起き上がると、実弥はスマホの画面を見せてきた。
「何か可愛いことしてたから見てた。」
スマホにはおはぎを抱いて眠る私が写っていた。
「……ねぇ~…!!いつも嫌がるくせに私とやってること同じじゃん!!」
「あぁ?何のことだか。」
「だからその笑顔やめろってば!!」
実弥はゲラゲラ笑ってスマホの写真をお気に入り登録していた。まあ私は『かわいい実弥』という名の名前でアルバム作っていますけどね!!