第43章 未到達
都合というものはわりと合うものだ。
仕事帰りの実弥と話し合っていると、思わぬことに唖然とした。
「もう土日ならいつでも良いってよ。」
「えっ私の家も。」
私たちはキョトン、として顔を見合わせた。
「……そんなにはやいものなんだね…」
「大丈夫か?別にすぐじゃなくても良いんだぞ。」
「あー…ううん、私、はやい方がいいかも。」
「?何かあるのか?」
実弥が言うので、私は答えた。
「あのね、この前指輪を見た人がね、相手側を言うときに“旦那さん”って言葉使ってくれて、なんか嬉しかったの。でもまだ彼氏だから、否定したんだけどね?」
「……」
少しの沈黙の後、実弥は席を立った。
「あれ、実弥?」
「…風呂入る」
「え?」
実弥がそそくさと立ち去る。
「………何よ」
意味がわからなくて、私はムッとした。
「奥さん」
開口一番に風呂上がりの実弥が、テレビをみながらおはぎを抱く私に言ってきた。
「え?」
「俺が旦那さんなら、お前は奥さんだよなァ」
「………」
私はポカンとしていた。
「……ってこと考えてた」
「…あぁ、そう」
「響きがいいよな。確かにこれは嬉しいわ。」
実弥は勝手に言って勝手に納得した。
「で、再来週の土日とかでいい?いきなりはちょっと…。」
「おう。問題ねェ。」
「よし。」
何だか実弥がソワソワしだした。
「お前のそういうとこ良いと思うわ。」
「えっ!?」
そして、それだけ言って部屋に入ってその日は眠ってしまった。
………何?
どうしたの??