第39章 大雨
「あっはっはっはっはっは!!!!!」
「最高ッ!!!!!!まじ最高ッ!!!!!!」
私の目の前で二人がお腹を抱え、テーブルをバンバンと叩き爆笑している。
木谷優鈴と桜ハカナ。前々から話していた猫…おはぎに会いたいと言うので、この平日に招待した。
書道家と大学院生のこの二人、仲が良いみたいで、二人で遊びに行ったりしているのをSNSでたまに見る。
「忙しい時に家事のこと言われてムカつくののわかるワー。僕大学院生で暇人みたく思われてるんだけどぉ、フツーに研究とか勉強で忙しいのに家のこと手伝えってめっちゃ言われる。」
「まあーシンダガワくんの言うこともわからんくもない。洗濯物取り込んでないから教えてあげただけでしょ。それに、お前が仕事ばっかして周りのこと疎かにしてるのは確かだし?」
優鈴が続けた。
「んでも、シンダガワくんはそんなことで文句言わないだろうから、多分『洗濯物も忘れちゃうくらい仕事しないで休め』ってことでしょ?」
「……大正解。」
ぷりぷり怒る私に実弥は確かにそう言った。
「え、それなのに無視してるの?」
「なんか、一つ嫌だと思うと全部嫌に思えてきて…」
「はあ?あんたら結婚するんでショーが。」
桜くんが眉を潜める。
そう。プロポーズされたという報告はあのとき手伝ってくれたプロフェッショナルの方々にした。そして、優鈴にも自然な流れで伝わった。
「したい、けど…まだお互いの家に報告とかしてないし、“する”って言い切れるのはまだ先かな。」
「ははあ、それあれじゃね?ほら、“マリッジブルー”。」
優鈴が言う。
……マリッジブルー?
「結婚を間近に控えた人が、結婚生活とか結婚準備に対して不安とか憂鬱感を覚えちゃうやつ。」
「私が…?」
「マリッジブルーで別れちゃうカップルってたま~に聞くよね。」
優鈴がけらけらと笑う。
じんわりと目に涙がたまる。
「はい木谷さんアウトー」
「えっ!ちょっと!泣かないでよ…!?」
しかし一度火がつくと止まらない。
「嫌だ…そんなの嫌だぁ……」
「いやいや、別にお前らが別れるといったわけでは…うえええん、俺も泣きそう…。」
「嘘泣きだろアンタ」
桜くんが慰めてくれて、何とか泣き止んだ。優鈴は本当に悪いと思っていたようで、ずっと謝っていた。