第38章 従兄弟の記憶ー怒りー
「私、いらない?」
幼子が不安がって、夜泣きをしたときのような声でした。
しかし彼女から発せられる凄まじい殺気は幼子のものとは思えませんでした。
私はまずいと思い、駆け出して鬼の頸を先に斬り落としました。
そして背後から迫り来るものに気付き、振り返り様に刀を振るいました。
「様ッ!!!!!!!」
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」
ガキィッ!と刀のぶつかり合う音がして、私は耐えきれずに二転三転した。様が上から刀に力をこめ、私が下から刀を受け止めている姿勢になり、刀身がぎちぎちといやな音をならす。
まるで理性のない獣のように叫び狂い、焦点のない目で私を見つめていました。そこには笑顔などない。わずか11歳の少女とは思えない憤怒の表情、殺気、そしてこの力。
「なりません!!!おやめください、様ッ!!」
「ああああああッ!!!!!!!」
「人を殺しては、なりません!!!」
私は叫びました。
あぁそうか。
こういうことか。
父親を殺したのも、見よう見まねで鬼を斬ることができたのも。このせいか。
「ああああああ」
「……ッ!!」
「うああああああッ!!!!!!!」
殺気に混じって、はかりしれない感情が見てとれました。
悲しみなのか、怒りなのか。
はっきりとしない。
そうか。そうだったのか。
もうとっくに、この子は壊れてしまっていた。
ただ壊れた自分を隠して圧し殺す理性が彼女にあるだけで、何かの拍子でそれが外れればもう彼女は“普通”ではない。
「ガキが…ッ!!」
舌打ちをして、刀から右手を離してグッと握りしめた。