第38章 従兄弟の記憶ー怒りー
「近付くなよ鬼狩ども!一歩でも動いたらコイツらを殺すからな!」
…あの鬼より私たちの方が速いでしょう。
俊足で斬りかかれば、良いか。
「そこのクソガキはうまくなさそうだなぁ」
ピクリ、と様の瞳が動きました。
はやく斬れば良い。大した鬼でもない。わかっているのに。
その変化に、私は興味を持ってしまったのです。
「なあ、お前、ガリッガリでひよっこくてよぉ、栄養もなさそうだしよぉ。」
「………。」
まあ確かに、同年代の子と比べても小柄で細身ですね。親からろくな目に遭わされていなかったので、当たり前でしょうが。
「その分お前は良いな。大きいし。」
鬼が私を指さす。それ以前に、私たち柱なんですけどね。
「お前はいらない。」
鬼が様を指さして言った。
……つまらない。この鬼はつまらないな。あの子にもさして変化はないし。もういいか。
この世にいらないのはお前自身だと教えてやらねば。
「………。」
その時、何かキラリと光るものが見えました。
私は予知のように、たまに変なものが見えることがあるのですが。それを言い当てると奇妙な目で見られるので困った特技です。
キラリと何かが光る。
それが一番輝いたとき、ビリビリと体が震撼するほどの悪寒が走り、ぶわっと汗が吹き出しました。
後ろからズドンッ!!!と大きな音がしました。
鬼が目を見開きガタガタと怯え、意識を保っていた隊士がガクン、と意識を手放しました。
汗が額を伝い頬を伝い顎を伝い地面に落ちた。
何だ?これは、何だ?
刀を持つ手が震えている。ガタガタガタガタと。
私は意を決して振り返りました。
「………いらない?」
小鳥のような声が聞こえました。
彼女の左手はポタポタと血が垂れていました。
そのすぐ側にある木の幹が、イビツにへこんでいました。
……。