第37章 再構築
その後、浮かれた気持ちのまま帰宅。
帰ってきてソファに寝転び、私はじっと左手の薬指にはめられた指輪を見つめていた。
「……いつまで眺めてんだァ?」
実弥がソファの後ろから顔をのぞかせる。
「死ぬまで」
「死ぬなよ」
苦笑する実弥に私はにっこりと笑った。
「いやー、でもビックリしたなぁ。ずっとおかしいとは思ってたけど、ね、おはぎ。」
「にゃ」
「実弥ってば私にフラれちゃうと思って、最後の思い出作りのために私が喜びそうな場所カナエにたくさん聞いてたんだって。」
「アホ」
実弥が私の頭を小突く。
帰りの車の中で改めて問い詰めると、すんなりと白状したのだ。
「可愛いよね、ちゅーまでしちゃって、きゃっ!」
「にゃあ?」
「最後だと思ったんだよ……忘れろ…」
実弥がうつむきながら言う。私はクスクスと笑って、いたずらっ子が内緒話をするように彼の耳に囁いた。
「あのね、これ、『キスしたくなるリップ』なんだって。ハルナちゃんからもらったの。効果覿面だった?」
そう言うと、実弥が私から顔を離した。
何も答えずにクルリと後ろを向いて、ドタドタと自分の部屋に行ってしまった。
耳まで真っ赤になっていて、私は吹き出すのを必死にこらえた。すごく照れていた。
効果覿面というか、効果抜群、かな?