第30章 旧風柱の記憶ー未来の風ー
「……ってな感じなんだけど」
二人が壁に打ち付けられる前にキャッチし、両脇に抱える。何が起こったのかわからないかというような表情だった。
「感想は?“次世代”。」
僕が次に、繋ぐ子達。
「…すごかった…です…!!震えが止まんない…!!!」
「うん、言い出しっぺは?」
「……すごかった」
けど、と強面が続ける。
「ぜってぇ追い抜かす」
その意思は硬く、揺るぎなく。
まるで…。
まるで、いつかの……。
その場に二人を落とした。
胡蝶さんが少し不安げに僕のところに駆け寄ってきた。
「右手、痛みますか?」
「……ちょっと、まずい」
すごいビリビリきてる。人差し指の生爪が剥がれただけだと思っていたけど、地面に変な角度で手をつけたから、ひねったのかも。
「……木枯らし颪をやるとき、すげえ痛かった。生爪どころじゃない。」
「え!?それならなぜやめられなかったのです!?」
胡蝶さんが言う。
僕は未だに稽古場に座り込む二人を見下ろした。
「……それが最近の柱の流行…だから」
「……はい?」
次世代次世代、繋げ繋げと。
口うるさく言われた。でもその人達もいなくなってきて、もう流行りも終わるかな。
「右手、やってなかったら…」
僕は強面じゃない方を指差した。
「多分、反応できてなかったよ」
「…!!」
こいつは土壇場で庇いやがったんだ、弟弟子を。
兄弟子としての役目を果たすために。だから、兄弟子の方が先に吹き飛ばされていたし、壁に叩きつけられる威力も強かっただろう。
「はは…!今ので、本気じゃないってことか…!!」
強面も兄弟子も何だか感激していたようだけれど、僕はしてやられた感しかない。
「チッ、あいつわざとだな」
霧雨。右手のことわかってて、素直に言っても大人しく治療しないって悟って、これにやたらと前向きだったんだ。