第30章 旧風柱の記憶ー未来の風ー
僕がそう言うと、廊下で話していた二人はキョトンとした。そのうちの一人がパッと頭を下げた。
「霞柱様、風柱様!!」
もう一人。目付きの悪い悪人面がそれを聞いて驚いていた。
「……霞柱…風柱…」
怒ったつもりはなかったのだけれど、萎縮させたかな。面倒だなあ人間って。この世のものじゃない奴らの方がまだお話しできるよ。
「風柱…!!!」
「え、何?」
そのうち強面が何かに反応してグッと一歩前に踏み出してきた。
え、無理なんですけど。
僕はさっさと行こうとした。が、に隊服を捕まれた。
「ご存じありませんか、優鈴。鬼殺隊でもないのに鬼狩りをしていた変な子ですよ。ちょっとした有名人ですよ。」
「知らない。帰る。」
僕は他人に興味を持たれたりするのが一番嫌いなんだ。
「わかるぞ実弥!本物の風柱様!憧れだよなあ…!!」
「うぜえ!話しかけんな!!」
何やら向こうは仲良くないらしい。
「彼らは風の呼吸の使い手のようですよ。」
「だから何だよ」
「手合わせがしたい」
僕はぴたりと立ち止まった。
だって、それを言ったのは強面だったから。
「……いや、怪我してんじゃん。僕も…まあ生爪剥がれただけだけど、一応そこのお姉さんからしたら怪我人みたいだし。」
「胡蝶さんに許可をいただいてきます。」
「は?」
とんでもない同期の言葉が聞こえたかと思えば、彼女はさっさと行ってしまった。
「手合わせ?風柱様と…?おい、本気かよ実弥!」
「だから、話しかけんな!!」
「いや、許可してない…」
ボソボソと話しても彼らには聞こえていなかった。
困ったなあ、と僕は頬をかいた。