第30章 旧風柱の記憶ー未来の風ー
僕より重傷なのはだ。
昨夜の任務、よほどの敵だったのか包帯ぐるぐるじゃないか。
「ああ、この怪我ですか。大丈夫です。桜くんのお父様に殴られただけですから。」
「…そっかあ。桜くんの両親、鬼殺隊のことよく思ってないもんね。ていうか、毎度思うけど、絶対に殴られるのによく行くよね。避けたり抵抗したりすればいいのに、無抵抗で殴られて文句言わないんだもん。僕ついて行った時、びっくりしたよ。」
「ええ。ですが、こんなもの、桜くんのご家族の痛みには程遠いのですよ。……それに、桜くんとの最後の約束なのです。紙飛行機を飛ばして、見せてあげるのが。」
「ふうん。桜くん、上弦の弐…だよね。」
僕、上弦にあったことないけど。多分負けるし、殺されるし、死ぬんだろうな。
「桜くんを追いかけて行った時に血鬼術食らったんでしょ。どうだった、上弦の弐。ヤバかった?」
「ええ。それはもちろん。桜くんの体を貫通した攻撃の余波だけで丸一日眠りました。朝も近くて、逃げたのか気配も姿もわからないのですけれど。」
「ふうん。大変だったねぇ。」
「あなた、その発言、相手が相手なら何されてもおかしくありませんよ。」
他人事のように何でも話すからよく怒られる。けど、他人事だし。
「僕は、他人に感情移入をして悲しんだり笑ったりしたくないだけ。鬼殺隊なんて皆死んじゃうんだから。は大変そうだよね。皆に情があるみたい。」
「……あなたのようにやっていけるものが、鬼殺隊に向いているのかもしれませんね。」
「ん?何か言った?それよりさ、君ってば病室に戻らなくて良いの。」
「私はもう退院です。あとは体と相談しながら本調子を取り戻します。」
蝶屋敷の廊下を話ながら歩いていると、前方に何やら話している隊士達が見えた。
にこにこ笑ったり、怒鳴ったり、感情の忙しそうな子達だった。
「ね~」
人見知り人見知りとは言うけど、この世の生きとし生けるもの全員に人見知りをしているのではない。
無駄に距離が近かったり、こちらに干渉しすぎる人が苦手なだけで。胡蝶さんとか、宇随くんとか、あそこらへんは苦手。冨岡くんは面白いからまあそこそこ。
だから、こういう子達はまだ平気。
「廊下は人の邪魔になるよ。」