第29章 出会い
「任務に行った隊士達が帰ってこないし、原因も不明な屋敷があって、今向かっている子達が深夜になっても連絡を寄越さなかったら行くようにお館様に言われていたの。」
私はその時の記憶を思い出していた。
柱合会議にも参加できずにいた私に久々に召集がかけられて、お館様を訪ねたときにそう言われた。
「あまりはっきりしないのだけど、私が到着したときには全て終わっていた。…一人、亡くなったと聞いたけれど……。」
「はは、俺は覚えてる。チラッとしか見えなかったけど、確かに霧雨さんはいたよ。」
その時に粂野さんが言った。
「幻かと思った。あまりにも綺麗な人がいたからさ。あの時だけじゃなくて何回か色んなところで俺は見かけたんだけど、やっぱいつ見ても美人だった。」
「えっ、あの、あの時は私は隠達を率いて屋敷の捜査をしただけで…えと、ごめんなさい、その他のときも覚えてなくて…。」
「しょうがないよ、あの時は柱だったし!」
粂野さんはケタケタ笑う。
「ええと、実弥の…兄弟子?ということで…」
「おう!」
「わ、私、部屋にいようか?」
募る話もあるんじゃないか。
そう思った。けれど、粂野さんが言った。
「いや良いよ、もう夜遅いし。実弥、連絡先交換しよ!」
「おう。」
実弥はすごく…ホクホクしているというか、すごく嬉しそう。
「霧雨さんも!」
「え?私も…ですか?」
「うん!実弥の彼女は俺の友達!何てったって兄弟子だからな~!」
よくわからない理論を振りかざされて交換した。
うん。よくわからないけど、まあいいか。
「実弥と霧雨さんがくっつくなんて予想できなかったし…またそこらへん聞かせて、ね?」
粂野さんがにししっと笑う。
「つーか、霞柱様は岩柱様とできてるって噂だったんだけどなあ…。」
そしてその後にそんなことを言うので、私は生きた心地がしなかった。