第29章 出会い
「お邪魔しまーす!!」
馬鹿みたいに明るい声が私達の部屋に響いた。
私は手を洗い、震えながらお茶をいれた。
「わ、猫いんじゃん!名前は?」
「……おはぎ」
「ぶっ、相変わらずおはぎ好きなんだなぁ!!」
待って待って待って何この状況誰か教えてクレメンス
えっと?私が?ちょーっとめんどくさいことになってて?助けてくれたのが、粂野匡近くん?で???
それが?実弥の??知り合いってことでオーケー?合ってる??何で何も教えてくれないのよ実弥いいいいいい!何で部屋に連れてくることになったの!?何で黙ってるのよ!!
お、怒ってるのかしら、怒ってるんだろうなあ……。
ダメかもしれない。プロポーズ断ったときくらい終わりを感じている。荷物まとめようかな。おはぎ、実弥と二人で仲良く暮らすんだよ…。
「お茶、どうぞ…。」
テーブルに座る二人にお茶を出した。
「ありがとう!えーと…そういえば名前何だっけ?」
「…霧雨といいます」
私が名乗った瞬間に、彼はピタリと動きを止めた。
先ほどまで明るく動いていた口が止まる。
「?」
実弥を振り返る。
「……、俺はお前に…話してないことがある。」
「あの、私も君にどうしてこうなったかを…。」
「それは後にしろ。」
亭主関白!?
「……匡近。お前、前世の記憶はあるってことでいいんだな?」
実弥が突然切り出す。
私はハッとして、その場に立ち尽くした。
「ああ、全部覚えてる。」
粂野さんははっきりと答えた。
「……匡近は…俺の兄弟子だった。」
「……兄弟子…ってことは…鬼殺隊…?」
実弥が頷く。
実弥は自分の話をあまりしない。私は、私が知っている彼しか知らなかった。
「覚えてねえか、俺が初めて柱合会議に参加したときにお館様が遺書を読んだこと。」
「…ごめん。…その時期は…先代の風柱がいなくなったばかりで…私はちょっとうじうじしていて、あまり記憶がないの。」
私が言うと、実弥は黙り込んでしまった。
「でも」
そう続けた。