第29章 出会い
「夜の七時とかだけど、彼氏さん平気?」
年下とわかってすっかりフランクな話し方になった。
とっても優しくてすごく心配してくれる。
「仕事がはやく終わってたら帰ってるかもですけど…基本的に遅いので、多分…。」
「急いだ方がいいかー。でもまだかかるんだよな…。お姉さん走ってきたんだっけ?よくこんな長距離を追いかけ回せたもんだ。」
「えっ!あ、む、昔から運動には自信がありまして!!」
「あっはは!体育とか5だった感じ?」
「そ、そうそうそう!もう運動会とか即戦力で!!」
先ほどゴリラと言われたことを思い出し、少しへこんだ。しかし目の前の彼はそんなこと思ってもいないようで。
何だか実弥とは真逆と言うか、タイプが違うなあ…。調子が狂う。
「仕事何してるの?営業とかでバリバリ動いてるとか?」
「い、いえ…い、イラストレーターで在宅ワークです…。」
「ええ!?マジ!?在宅ワークでそんなに走れんだ!?」
まあ普通そうなりますよね!!
「えーでもすげえ、イラストレーター?絵とか上手いんだ?」
「ま、まあ…。」
「お姉さん運動もできて絵も描けるとか最強じゃん、何者?」
………こういう、素直に褒めてくれるところは実弥と違うなあ。実弥は褒めてくれなくないけど、不干渉なところは不干渉というか、けどそこがまた居心地良いんだよなあ。
「ははっ、スマホもなしで身一つで走るところといいまじすごいよお姉さん」
「いえいえそん「おい」」
突如、私達以外の声が聞こえた。