第29章 出会い
無我夢中で走って追いかけてきたので、道がわからなくなるというハプニング。
そして、画集を入れたビニール袋をマンションの入り口付近にある部屋のポストの前に落としてきたが、そこにスマホを入れていたことを思い出して八方塞がりだった。
引っ越したばかりともあり地の理がない。男の子にマンション名を言うと知っているというので、連れていってもらうことにした。
「いやー、あそこらへん治安悪いし歩かない方がいいですよ?久しぶりにショートカットで通ったらあんなことになってるんですもん。あ、ちなみに俺も動画もう消したんで安心してください。」
「す、すみません…。でも、あなた、こんな夜に出歩いて…大丈夫なんですか?」
「へ、俺?」
「だって、学生さんなんでしょう?」
私が言うと、彼はぎょっとした。
「いやいやまさか!!俺社会人!!サラリーマン!!26歳!!」
「えっ!?お姉さん何て言うから学生かと…!!あと私より年上…!!」
「マジ?お姉さん年下??」
「えっ!老けて見える??いや、あんまり年は変わらないんですけどね!?」
た、確かに…ずっと家にいるからスッピンですけど!!本屋に行くだけだからジーパンにシャツですけど!!
「いやいや、老けるって言うか…何か、美人だし大人の女感があるって言うか…年下には見えないなぁ……。」
「は、はい!?」
「ま、話しきいてたら彼氏いるんだろ?羨ましいなー!こんな美人どうやったら捕まるんだ?俺もモテたいー!」
願望に忠実か。
「あ、あの…私はその、お力にはなれませんけど…き、きっと良い人が…!ほら、お兄さんとっても素敵ですから!!見ず知らずの私を助けてくらたわけですし!!」
「はあー…?女の子が何かされてたら助けるのは当然ですよ、モテるモテないどころではなくて。」
「え?本当におモテにならないんですか???」
「悲しいですけど、はい」
おい世の中の女の子。こんな良い男放っておいて何をしてるんだ目を覚ませ。すごい良い人がここにいるぞ。おい。