第29章 出会い
「このまま警察に行ってもいいんだぞ!!」
その一言が決定打だったのか、青い顔になった。
「あ、あの」
何も言わなくなったところで私はやっと声を出すことができた。
「私の写真、全部ここで消してもらってもいいですか…」
「わ、わかった!!ほら、これで消えたから!!」
彼は少し操作した後にスマホを見せてきた。どこを見ても私の写真はなく、ほっと安心した。
「もう二度と、やめてくださいね。」
「あ、ああ。」
「あと、警察とかはいいので一発お見舞いしても?」
私が拳を握って言うと、彼はぎゅっと目をつぶった。
「誰があんたなんかと付き合うか!タイプじゃないっての!!」
「ぐうっ!!!!!!!!」
渾身の右ストレートを喰らわせると、再び地面に倒れ、さっさと走り去っていった。
「わあ、やりますねえお姉さん!!」
私を助けてくれた男の子はにこりと笑った。
…学生だろうか。若い子に助けてもらっちゃった。
「い、いえ…そのう、お恥ずかしいところを…」
「いや、よかったです!!」
なんていい子なんだろう…。
「家ここから遠いですか?近いですか?送りますけど。」
「近い…遠い…??」
私はあたりを見渡した。
「………ちょーっと…わからないというか」
人の良さそうな少年は、真っ暗な夜の月に照らされたままキョトンとした。
その左目の下には、二本の傷がはっきりと見えた。