第29章 出会い
なるべく外に出ないようにしたかったけれど、出ないといけないときがある。
欲しいなぁと思って予約していた画集、今日発売だったとは…!!うかつだった。
本屋まで走ってさっさと帰ればいい。
ということで仕事が一段落した夕方に画集をゲットしビニール袋ぶら下げマンションに向かう。
何となく周りを警戒していたからか、すぐに気づいた。
私達の部屋のポストの前に、誰かがいた。
見覚えのない男だった。封筒をポストに入れようとしていた。すごく見覚えがある封筒を手に持っていて、別に配達員というわけでもなく。
「あの」
私は何の迷いもなく話しかけた。
「何してるんですか」
「…え……」
「………それ、私宛ですか」
すると、封筒をばっと後ろ楯に隠して私の横を通り抜け、さっさと走り出した。
「待ちなさいッ!!!」
私は画集をその場に落として、身一つで走った。
すんでのところで逃げるだけあって足がなかなか速い。私も遅くないけど、男に追い付けるほど速くはない。
どんどんどんどん狭い方へと行くので、走りにくい。
最後の最後は行き止まりに来たので、ガシッとその手をつかんだ。
「あのッ!!」
「うっわ、本当についてきた」
「当たり前でしょ!!!」
追い詰めると、彼の顔に何となく見覚えがあることに気付いた。
「………え、あなた、合コンの時の…」
「あ!?覚えてなかったの!?」
「え?」
私はキョトンとして手を離した。
「いったー…何なの?力強すぎるし足速すぎるし、ゴリラ?」
「ゴッ……」
ガツン、と頭を殴られた気がした。
ええ、何で私が罵倒されてるの?
「て、ていうか何であんなイタズラしたんですか!結構まじでビビって…!!」
「いやいや、言ったじゃん。俺けっこ~霧雨さんおきになんだって。」
「……はい?」
私は記憶を漁ったが、そんなことを言われた覚えがなく困り果てた。