第27章 苦悶
晩ごはんの肉じゃがを見たとき、実弥が目を見開いた。
「…お前が作ったのか、これ。」
「うん」
「……じゃがいもが切れてる…。」
どうせ噛むんだからいいじゃんと、肉じゃがはじゃがいもを丸々一個ぶちこんで作っていたがテレビと全く同じように切ってみた。それに感激しているらしい。
「………野菜に火が通ってる。」
茹でるときに、そんなに待ってられねえよとすぐ終わらせるのだが、ちゃんと待った。
「すごい…私のご飯がまずくない…。」
「ていうか美味い。」
実弥は私が料理下手でも文句を言うことはなかった。褒めることもなかったけど。
料理を頑張るのもいいかもしれない。
実弥が皿を洗ってくれると言うのでお言葉に甘えてソファに寝転がる。
家にいるとは言え、仕事をするためにいるからなかなか休まるときがない。晩ごはんのあとのこの時間が一番リラックスできる。
「おい」
皿洗いを終えた実弥がソファにやって来た。実弥が座るなら寝転んじゃダメだと起き上がろうとすると、実弥がズシッと覆い被さってきた。
「………」
空気が変わった。
何となくそれを感じ取った。実弥の顔が近づいてくる。
が。
「にゃあん!!にゃあ!!!ぐるるるるるる!!!」
おはぎが鳴き出した。
「え!?どうしたの!?」
実弥を押し退けてソファから降りる。
おはぎはソファの下に置いていたティッシュをやけになって引っ張りだし、ビリビリに引きちぎっていた。
「ぎゃあああ!!ちょ!!ちょ、ちょちょッ!!!待ちたまえおはぎくん!!!もったいない!!もったいないからああぁッ!!!」
既に五枚ほど犠牲になっていた。軽く大惨事だ。いったいいつの間に…!!
「おい…」
「何?ちょっと片付け手伝ってほしいんだけど……」
実弥がソファの上でプルプルしていた。行き場のない手が虚空をさ迷っている。
あー……。
「何で邪魔してくんだよ!!!!!ソイツ!!!!!!!」
実弥の声におはぎが震えて、毛を逆立ててふしゃー!と威嚇する。
………いやいやいや。相手は産まれて一年にも満たない子猫ですよ、実弥くん。