第27章 苦悶
リビングのテレビの前に二人がけのソファがある。
新しく購入したそれが実弥のお気に入りのようであり、二人で座るとちょうどいいサイズ感で、私も気に入っている。
そこに座っていると、おはぎがかまってくれと言わんばかりにやって来る。
実弥はそれが嫌なようで。
何となくそれっぽい雰囲気になった時、おはぎがぴょんと私の膝に乗ってきたり、やたらとにゃあにゃあ鳴いたり、私に甘えてくるので中断する。
実弥も最初はかわいいものだと思っていたけれど、二回三回と続くと、我慢の限界というか、相手が子猫だろうが怒るようになった。
「面倒くさいですねぇ」
「にゃあ」
おはぎが起きて私にすり寄ってくる。
「実弥はね、おはぎのこと大好きなんだよ。」
「にゃあ」
「かわいくてたまらないんだから。」
私が見ていないところではベタベタに甘やかしているらしく、著しくおはぎ用のお菓子が減っていたり、やたらとおもちゃを買い込んだりしている。
素直じゃないなあ、全く。
私も負けじとかわいがっているけれど、実弥は確実に好感度をあげている。接し方がうまいのだろう。
「そろそろ帰ってくるよ。ご飯、肉じゃがなんだよ。最近料理の勉強始めたから喜んでくれるといいなあ。おはぎはキャットフードで我慢してね。」
仕事の合間に息抜きでグルメ番組とか見ていたら、美味しそうなレシピがたくさんのっていたので作ってみることにした。レシピに忠実に作るのってすごく面倒だから嫌だったんだけど、それは料理がうまくなってから言えって話だよね、うん。
「にゃん」
おはぎがないて、玄関の方にポテポテと歩く。すると、がちゃりとドアが開いた。
「ただいま」
実弥が微笑んでおはぎを撫でる。
何だか羨ましくて、
「おかえり」
と言っておはぎの横にしゃがんで体を小さくしていると、実弥は私の頭も撫でた。