第27章 苦悶
最近実弥の機嫌が悪い。
おはぎが青い目でじっと私を見てくる。
私の仕事道具のペンタブの上がお気に入りのようで、隙あらばそこで眠っている。そろりそろりとおろして、膝の上にのせて作業を再開する。
依頼された仕事に、私は音楽とかあまり聞かないので詳しくないのだが、とある音楽グループにミュージックビデオを描いてほしいと依頼がきたのでそれがまた大変なのだ。
歌ってる本人が出たらいいじゃないと思ったけれど、イラストレーターが描くミュージックビデオが流行りらしい。知らなかった。
私は主にポスターとか、ブランドの広告とか本の挿し絵とか静止画がメインなので、動画はあまり製作したことがない。
できなくはないけど四苦八苦した状態で、曲を聞きながらやっているのだがもはやその曲にとらわれている気がする。
この前、お風呂を掃除していたときにいつの間にか口ずさんでいたので重症だなと思った。
しかしそんなに仕事が忙しくても曲に呪われているような気分になっても、気になるのは実弥の不機嫌さである。
最近とってもイライラしている。まあ原因はわかってるけど。
「ふにゃあ」
君のせいだよ、おはぎくん。