第24章 青碧蒼
「…めっちゃ良い話じゃねえか……」
本を読み終えた実弥が、ダイニングテーブルに座って目頭をおさえる。
私は少し呆れながらよそったご飯を目の前に置いた。
「最後の手紙、まじ泣けたぜェ…」
でもまぁ私も泣いたから何も言わないでおこう。
最後は死者の友人へ送った手紙が郵便局を経由して自分の元へ戻ってきて、主人公がその死を受け入れて終わる。
「死を受け入れるって辛いけど大切だな…。」
実弥が言う。私は彼の真正面に座った。
「じゃあ、死を受け入れられなかったら…」
私が聞くと実弥はキョトンとした。
「………辛いだけかな…」
ポツリと呟く。
何で青い表紙にしたんだろうか。何となく意識したのかもしれない。
私も誇り高く死んだあの子の死を受け入れたい。
けれど、もっと違う道があったのでは。できることは他にもあったのでは。
そう思ってしまう。
「……時透のことか?」
実弥が聞いてくる。
私はハッとして口を閉じた。
「…ううん。何でもない…食べよ。」
私は箸を持った。
今日は焼き魚。焼いただけだから美味しいはず。
「……会いてえのか」
実弥が言う。ビックリして箸を止めた。
「、時透に会えるとしたら、お前は会いに行くか?」
「………」
もしも話だろうか。
こんなの珍しい。
「会いたくない。あの子が私を殺したいなら会う。」
「ア?何言って……。」
「……だって…ッ…」
私は言葉を止めて箸を置いた。食欲がない。
「……もう…今日は寝る…」
「あ、おい」
実弥の制止をふりきって部屋にこもった。
ソファーベットに寝転ぶ。
無一郎くんになら殺されても良いように思う。あの子を思えばいつも罪悪感が襲う。
本当に良かったのか。
本当に正しかったのか。
この答えは、きっと永遠にわからない。