第24章 青碧蒼
会いたいわけではない。
どの面下げて会いに行けばいいのかわからないし、生まれ変わっていても変わらなくても、私は会いたくない。
けれど、ただひたすらに謝りたい。
一人にしてごめんなさい。
死なせてしまってごめんなさい。
何もできなくてごめんなさい。
私はあの日、無一郎くんと手を繋いで彼を連れ帰った。
果たして正しかったのか。
それが彼の幸せなのか。
私はわからない。あの青い目で見つめられる度、不安に襲われた。
記憶のない幼い少年に、間違った道を選ばせたのかもしれない。
「ただいま」
玄関から声がして、ぎょっとして起き上がった。おはぎがそれに飛び起きる。
何で今日に限ってこんなはやくに帰ってくるんだ。教職員って本当に大変だな。
……って、そんなのどうでも良い。
私はごしごしと涙を拭った。
おはぎがぽてぽてと歩いて、すり寄ってくる。
そんな時に部屋のドアが開いた。
「あァ、何だ、いるのかよ。」
実弥がホッとしたように言う。
「ぁ……うん…ごめん……おかえり…」
私は何とか笑って言ったが、実弥は目を見開いて私に近づいた。
「え、あ、あの、さね、み」
そっと私の顔を包んで、じっと見つめてくる。
「どうした」
まだ目尻に残った涙をぬぐってくれた。
「本、読んでたら泣いちゃったの」
私が本を見せると、実弥は罰が悪そうな顔をした。
「ん?あ…あー、本か。」
実弥はそう言って、鞄から何かを出した。
「えっ」
私はそれを見て驚いた。私が持っているのと全く同じ…!!
「いや、まあ…お前の絵だってわかったし売ってあったから」
決まりが悪そうに目をそらす。
私は仕事の内容をちくいち話しはしない。…お店で見かけて買ってくれたのか…。
私は絵を描いただけで本は書いていないが、嬉しくてぎゅっと抱きついた。
実弥は照れて離れろと言ってきた。ごめん。