第4章 凹凸
私には不思議な特技がある。
何でかわからないけど、気配察知が異常に優れている。第六感というらしい。
普通の人も第六感はあるけれど、私はそこから感情や気持ちが読み取れる。でも、第六感で感じられないほど繊細な気持ちについては疎い。
例えば、実弥が私に向けていた好意とか。
今真横で仏頂面をして、周りにビビられてる実弥。傷のせいか顔が怖いって言われがちだけど…優しい。
「お前、服それで良かったのか」
「うん。」
私達は、自分のものは自分で買う。たまに実弥が奢ってくれたり、私が出したりするけど。
買ったのは…パキッとしたカッターシャツと高めのジーンズ。店で着替えてきた。紙袋のなかには愛用のスウェット。
「…もっとはやりのとか…あるんじゃねえのか。」
「私がはやりを知っているとでもお思いか。」
「………着れば良いじゃねえか、可愛いの。」
実弥がボソッと言う。
「……ん~別に…」
視線をそらすと、側のショーウィンドウに私が写った。
なんだか疲れきった、やつれた顔をしていた。
仕事のせいではないのはわかっている。最近よく見る夢のせいだ。
「欲しいのか」
実弥が立ち止まる。
え、と思って振り向くと、彼はショーウィンドウの中を指差していた。
ショーウィンドウのマネキンに目が向いた。オシャレで、可愛いワンピース。こういうヒラヒラしたのがはやりなのかな。
「え、あの」
「試着してこいよ」
「……うん」
まさか写っていた私を見ていたなんて言い出せず、そのまま店内にはいった。普段全く使用しない感じの店で、何だか場違い。
実弥も入ってきたけど…なんか雰囲気がよく似合うな。
「これだろ?」
「えっ」
実弥がいつの間にかあのワンピースを手に持っていた。そして、試着室を指差した。
「着てこいよ」
実弥はぶっきらぼうに言う。