第22章 先へ
金曜日の夜から、言った通り実弥が手伝ってくれた。大きな重いものを全て任せて、仕事終わりに悪かったと思ったけれど大して苦ではないようだった。
実弥が帰ってくるとだいたいのものはもうなかった。
「ベッドは引き取ってもらったし、今日は床で寝ます。布団の存在を忘れていました。」
「……初めてここ来たときもそうして床で寝たなぁ。」
「思い出すね。」
私たちはごろん、と寝転がった。
床はひんやりとするし、痛いけど、ぴったりくっついて寝たんだ。
「ねえ実弥」
「ん?」
「……泣きそう…」
「泣いてろ。ここにいるから。」
私はぎゅーっと実弥にくっついて、ポロポロ泣いた。
「お前酒飲んだ?」
「君がお風呂に入ってる間に…。」
「……ビール五本も飲んだのかよ。」
泣き上戸の私を実弥がよしよしして、そのまま眠った。
朝四時に目が覚めた。ちょっとだけ仕事をしてから、実弥を起こした。
「行きましょ~、引っ越しするよぉ、実弥く~ん」
「ん……からだ…いってえ…」
床で寝たのがこたえたのか、変にかくかくした動きを見せながら起き上がった。…あのときは四年前。まだまだ若いけど、確実に年はとってるな。
「おはようございま~す!今日は朝ごはん買ってきたの、もう何にもないからね、おにぎりだよー!」
「あ?…起こせよ、俺が買いに行っただろ。」
「いいのいいの。」
私たちは何もないリビングで、床に座りながらおにぎりを食べた。
「お前、仕事道具残してるんだろ?」
「うん、後部座席に乗ると思う。」
「俺は大したもん残ってねえし、一往復でいけそうだな。」
じゃあもうすぐにこの部屋を出るのか。
「機材はお前が運んでくれ。俺は壊しちまいそうで怖い。重いもんは運ぶから言え。」
「わかった。」
エレベーターないと何往復かしないといけないから大変だ。ハードディスクやらパソコン、キーボードを運び、あとは段ボールいっぱいの画集やら今まで集めてきた大切な資料。
引きずるようにそれを運んでいると、実弥がひょいと軽々しく持ち上げた。
「こーゆーのを重いもんって言って俺に頼るんだよ、アホ」