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【鬼滅の刃】モブ隊員メモリー【オリジナルストーリー】

第2章 憂き目


ある日、今日も何時ものように殴られるのを覚悟の上で道行く通行人に向い声を掛くと、またしても頬をひっ叩かれて何回も何回も角張った拳で殴られた。子供相手に容赦もなしに、まるで溜まりに溜まったストレスを発散するかの様に。周りの人は憐れみの目で此方を軽く一瞥するだけで、助け船を出してくれる人は誰一人としていなかった。
散々殴られ続け、止めとばかりに腫ぼったくなった頬をつねられて泣きそうになっている私を見て私を殴る男を咎めていたもう一人の男は、ふと私の頭に挿し込まれていた簪を見つめると、途端に目をギラつかせて叫び声を上げながら私に襲い掛かってきた。極彩色に、見る位置によって其の色を変え煌めく簪。誕生日の日にお母さんがくれた私の宝物。其は元々は大人しくしていた人の態度を変えるには充分だったのかもしれない。だからといってあんなに急に態度を変えるなんて、と久しく驚いたものだった。

髪を引っ張られたり、着物を引き千切られたり。
子供相手にどんな手段を使ってでも簪を奪おうとしてきたその男に私はなす術もなくやられっぱなしでいた。成人男性の腕力に対して対抗するなんてとても無理だ。必死に簪を抜き取られぬように頭を押さえているのだけで精一杯。
そんな風に一方的にされるがままだった私の前に、突如現れたのは髭を蓄え白色の着物を着た男の人だった。そしてその人は地面に蹲っている私を一瞥すると、男達に向け心底怒った表情をしてこう一喝した。

「貴様ら、子供に対して天下の往来で狼藉を働くなど恥ずかしいと思わないのか!人としてどうかしているぞ!」

「何だってんだよクソジジイ!こんな乞食の子供どうしようが俺の自由だろうが!」「乞食だろうが何だろうが関係ないだろう!」

…お兄さん、私を殴る人を咎めていた時は優しい口調だったのに……

二重人格と見紛うような豹変に恐れ戦きながら言葉での応酬を目の前で延々と見せられている内に、事が大きくなったので他の村の人が警官の人を呼んできたらしい。その警官の人は冷たい目で戦いを繰り広げている彼らを見据えると、たった一言だけ「いい加減にしないと逮捕するぞ」と呟いた。

其を耳に入れた男達は舌打ちしながらこの場を小走りで去っていき、先ほど私を庇ってくれた男の人は此方に歩み寄ってくる。私がすっかり怯えて座り込んだままでいるとその男は私に向かいこう言った。
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