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【鬼滅の刃】モブ隊員メモリー【オリジナルストーリー】

第2章 憂き目


太陽みたく周りを照し、未来に向い凛と前を向る子に成れ。其がわたしの名前に込められた願いと昔に母から聞いた事がある。



 *◆*



激しく血飛沫が舞う。
お父さんのお腹に鋭い爪が抉り込み、血が溢れ出す。
異常を報せに行こうとしたお母さんの手足が、潜んでいた鬼によって引き裂かれる。
私は襖の中で息を押し殺し、隠れてその光景を見ている事しか出来なかった。
此処で子供が出てきた所でどうにもならない事は判っていたから。

だからといって両親を見殺しにしたのだ。

そして時が経ち、漸く鬼の足音や血肉を啜り咀嚼する音が聞こえなくなった。
噎せ返る血の臭いで頭がくらくらする猛烈に押し寄せてくる吐き気に思わず頭を抱えたままでいたが、そういえばと我に返り私は助けを呼びに行こうと鬼がまだ残っている可能性も忘れて思い切り襖を開く。
其処で私が見たものは、正しく地獄の形相だった。
夥しい量の血が部屋一面に広がっており、其は喩えるならば狂い咲いた彼岸花畑の様だとでも言うべきか。今までずっと幸せに、共に暮らしていた家族は首が捻じ曲がり瞳孔が開き切って完全に無惨な物言わぬ死体と化して無造作に床に転がされている。

この所業は全て先程までこの場に留まっていた鬼達によって引き起こされたもの。
今までの団欒の日々は、最早只の骸となってしまった。
子供心にそう理解した瞬間。止めどない感情が急に溢れ出してきて、抑え切れない涙が延々と零れてくる。暫くの間は必死にお母さんの躯を抱きとめて泣きじゃくっていたけれど、やがてずっと死体と一緒にいるこの状況が恐ろしく思えてきて、慌てて裏口から麓の村に向い走り出した。

「誰か…っ、誰か助けて…っ!」
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