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満天の星が、君の夜を照らすから

第2章 それからそれから


そうして集めたお金を近くのコンビニに押しかけて、同い年ぐらいの学生を睨めあげ半ば脅す形で全て十円玉に変えてもらい、そのまま公衆電話へと駆け込んだのだ。
携帯を持っていなかったことが功を奏し、よくかける電話番号は空で言えるくらいに暗記している。迷わずには勾司朗宅へと電話をかけた。内密に事を進めるのなら彼が一番だ。

というわけで、家にいた勾司朗にお願いして車を出してもらったのである。
あの事件からしばらく時間が経ってしまっているが、阿幾は村にいるらしい。自分の目で見ないことには完全には信じられないが、ひとまず安心する。彼の母親をしている女も、様子を伺って気にかけている話を聞いたがこれは信じられない。信じたくもなかった。
は靴を脱いで、椅子の上で膝を抱えた。

「おい、汚れるよ」

汚いものを触るように手の甲での足を叩く。

「なんだよ、靴脱いでんじゃん」

「……まぁ、全身汚ぇか」

「キャッチボールできてなくない?」

数十分前まで地面に這いつくばるように小銭をかき集めていたので汚れるのも致し方ない。他にやりようがなかったのだと自分に言い聞かせ、自尊心を守った。

「あとどれくらい?」

「ここまでくりゃ、もうすぐだ。お前は案山子しか乗ってないから、たまには現代の乗り物に乗るのも勉強だな」

「一番楽だし、早いもん。メンテさえすればお金もかからない。おまけにかわいい子だった」

「確かにな。見た目もキレイなもんだったよ」

足は他の案山子と同様にないが、禍津妃よりも人間に近い形状をしており、月夜史(ツクヨミ)の名前の通り夜へ向かう狭間のような美しい藍色をしていた。一目見た瞬間からは心奪われたのだが、先日の乱闘のせいで儚くも散ってしまったわけで……。
思い出して気分が悪くなったので、は思考を払う。

なくなってしまったものを今更どうこう言ったところで、もう戻らないのはわかっているつもりではあるのだけれど、やはり悲しいものは悲しい。ずっと共に過ごしてきた友人がいなくなったのと等しく思える。
他の隻たちはどうだかしらないが、詩緒は自分と一緒の気持ちだろうなと思った。

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