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満天の星が、君の夜を照らすから

第2章 それからそれから


しばらくお互い無言で車に揺られていたが、ふと視界がひらけると、は体を起き上がらせて窓に張り付いた。

「あ! 見えてきた!」

木々に囲まれるようにして立つ建屋が見え始めたのだ。
狭い鉄の乗り物に揺られすぎてお尻が悲鳴をあげていたのでありがたい。案山子であればこんなことは……と比べてしまうが歩くより遥かに快適だ。

遠足に喜ぶ小学生のように騒ぐに勾司朗はため息をつく。

「いいから大人しく座ってろ。何されるかわかったもんじゃねぇ」

「危ないとこは触んないよ」

「お前車初めてだろ」

危ないところがどこかわかんのかよ、とお小言をもらいつつは再び椅子に座らされる。
不貞腐れて顎を突き出し、車が揺れるくらい大袈裟に椅子に収まると「言ったこっちゃねぇ」と再び勾司朗の苦い声がした。それはこちらのセリフだと腕を組んでムスッとしたままは外を見やる。

木々の合間から顔をのぞかせる集落に胸がザワついた。
もちろん、里帰りが嬉しいわけではない。どちらかといえば近づくのはすきではない方だ。案山子を手に入れたことで態度の変わった村の住人たちをこの目でしっかりと見てしまったからには、絶対にすきにはなれない。
それはきっと、匡平も阿幾も同じだろう。

だが今は違う目的がある。そのために彼女はここへ戻ってきたのだ。

頬杖をつき、窓の外へ視線を向けたまま呟く。

「村に着いたら入口で降ろしてよ。そこからは歩いていく」

ちらりと視線をに向ける勾司朗が窓ガラスに映る。

「まずはお館に挨拶だよ。お社にも顔出せ」

「絶対にやだ」

「……お前なぁ、一応体裁ってもんがあるだろ」

「私にはない。というか、お社って無事だったわけ?」

眉をしかめ、下から窺うように相手を睨む。
睨まれた勾司朗は可笑しそうに口の端を上げ、ハンドルをきった。

「お前、自分がどれだけ病院に世話になってたと思ってんだ? ダメになった分は再建したんだよ」

「これだから古い人間はヤダね。全部が全部を直せると思ってる」

肩をすくめ、ふんと鼻を鳴らした。
案山子がなくなった今も、どうにかして再生できないかと奮闘している話を車中で聞いていたは小馬鹿にするように半笑いを被せる。

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