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緑の黒髪、黄なる涙

第2章 事件の収束


事件後、病室には警察関係者が出入りし事情を聞かれ、かと思えば父親の仕事仲間から上っ面だけの労りの言葉を貰い、無いよりはと作った義眼が手元に届き、どうにか片目での生活が支障なく送れるようになった頃には、犯人も捕まっていた。
随分大きな組織の犯行だったようで、中でも主犯格である男の末路は散々なものだった。

被害者はやはり幼い子どもばかりで、のような高校生が他に被害があるような報道はない。
彼女の場合も論外的な被害者として一時話題になり、未成年のため名前は伏せられたものの、どこから情報が漏れているのか、ひっきりなしに取材のアポイントを取る電話が鳴っていた。
マスコミのせいでノイローゼになってしまう。

大声で暴れて精神疾患でも装ってやろうかと考え始めたとき、父親が率先して対応にあたりはじめた。いい点数稼ぎだとでも思ったのだろう。

政治家としての父親は立派なのだろうが、家族として見る彼のことは心からすきになれずにはいた。それは母親に対しても同等である。
画面越しに、娘の安否と犯人への憎しみに熱弁を振るう男の姿に嫌気がさし、テレビを乱暴に消した。近くにいた母親がビクリと肩を揺らすが知ったことではない。

無言のまま食卓につき、よく冷えたグラスに注がれた紅茶で唇を湿らせてから、ロールパンに手を伸ばした。

「……学校、まだつらかったら休んでもいいのよ?」

「平気」

お窺いの言葉をバッサリと切り捨てて、は黙々と朝食を平らげていく。
言葉を詰まらせたように眉をしかめて唇をキュッと引き結ぶ母親に、胸がざわつく。言いたいことがあるならハッキリ言えばいいというのに。自分が窮地に立たされた時だけベラベラとよく喋る。

嫌な思い出が蘇り、はかき込むように食事を終えてその場を逃げ出す。
リュックを背負って素早く玄関を出た。
家の前で待っていたらしき数人の記者を振り切り、父親が手配してくれた車に乗り込む。扉が閉まると同時に、静かに発進した。

「おはようございます」

見知った顔の運転手が、バックミラー越しに微笑む。

「おはようございます。いつもすみません」

「いいえ、大変でしょうから。お父上も貴方のために車をご遠慮するとはお優しい方です」

その返答に、は苦笑しかできない。

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