第2章 事件の収束
自らの体に音が染み込むのを感じ、ふと視線を上げると金色の髪を風に靡かせて前を歩くジュウの背中。どちらへ向けた言葉なのかハッキリとはしなかったが、雨ももそのまま口を噤んだ。
軽そうなカバンを小脇に抱えて何事もなかったように進むジュウが、どこか悲しげに見える。表情が見えないのでそう感じるのか、片目になったことにより遠近感を上手く掴めないのでそう見えるのか、定かではないが普段は感じることのない負の感情が見て取れた。
自分のことですら今は満足に面倒も見切れないのに、ジュウのことを放っておくこともできない。
心が急くばかりで、結局は背中を見つめたまま校門前まで一緒に登校しただけになってしまった。
そこまで来ると、遠目からを呼ぶ友人たちの声がする。
笑顔で手を振るが、相手の方からは絶対に寄ってこない。ジュウがいるからだ。
仕方なく雨と、自分と同じクラスであるジュウにもまた後でと言い残して友人たちの元へと向かう。ジュウが優しい人であることを伝えても、聞き入れようとしない確固たる意志を持つ友人たちには苦笑するしかない。
「」
名前を呼ばれ、振り返る。
呼んだ本人なのに、ジュウがなぜか困ったように眉を寄せている。
「なに?」
「いや……抱え込みすぎるなよ」
「……ん、ありがと」
笑ってその場を後にした。
友人たちの側へ行くと、朝のあいさつもそこそこにジュウと一緒に登校していたことへの心配がはじまった。
どこから一緒だったのか、何かいわれなかったか、されなかったか……一体ジュウをなんだと思っているのかと呆れるほどに。ももう慣れたもので、適当にあしらいながら今日の授業の話へシフトチェンジしていく。
毎朝その繰り返し。
事件も片がつき、犯人も名前が上がった。残るのは鬱陶しいマスコミのみだ。それがなくなればまたいつもの毎日がはじまるのだろう。義眼のこともそのうちなかったように話題にものぼらなくなる。
果たしてそれでいいのか。
は心の奥底に、眠るようにひっそりと息づく何かの存在を感じずにはいられなかった。