第4章 honey.4
絶頂が近い。
「はっ…ん!…んっ」
「真澄、手…のけて?」
くちゅくちゅと、歩は手を上下させながらたまに先をぐりっと弄ぶ。
俺は両手で口を押さえて声が漏れないようにしながら首を左右に降った。
「声…聞きたい…」
耳元で息を吹きかけるように囁く歩の声に背筋がぞくっと反応する。
カプッと耳朶を噛んだ歩はそのままちゅうっと吸い上げるようにして舌を這わせる。
嫌だっ…!
じわりと視界が滲む。
ガクガクと足が震えて、今にも崩れ落ちてしまうくらいに力が抜けそうだ。
「そろそろ、んっ。…イきたい?」
「っ、ふっ…!」
鎖骨辺りに舌を這わせる歩がこちらを見上げてくる。
唇の隙間から覗く赤い舌が欲情を煽り、俺がきゅっと瞳を閉じた時だった。
……ん?
何だ…この匂い。
部屋の違和感に気づいて目を開けた俺が視線を動かした先にあったものは…。
黒い煙を吐くフライパン。
「あっ!!!」
「っえ?」
俺の驚いた声に歩も反応して顔を上げるより早く、乱れた服を掴んで慌ててキッチンに入る。
親父からの電話を取る前に火を切ることをすっかり忘れてしまっていた。