第4章 honey.4
……で。
俺はいつまでこうやってればいいんだ?
歩は壁に手をついて俺を囲ったままで、親父と会話を続けていた。
「じゃあお兄ちゃんに代わりますね」
やっと会話が終了し、歩が受話器をこちらに手渡してくる。
「親父?」
『ああ。じゃあ生活費はまた振り込んでおくからな!』
「…分かった。しばらくって具体的にいつ帰ってくるのか、決まってねーの?」
何を言っても親父の決定が覆ることはないので、諦めて気になることだけを質問していく。
『少なくとも日本が暖かくなるまでは帰らないかな!』
それって今年中には帰ってこないってことじゃねーか。
親父の寒さ嫌いもここまでくると尊敬に値する。
「…せめて今年中には帰ってきてく…ぃっ?!」
その時首筋に感じた鋭い痛みに思わず眉をしかめた。
『ん?まあ考えて置くよ』
このガキっ…!!
いつの間にか俺の首元に顔を埋めた歩が、首筋に噛み付いてきたのだ。
歩を引き剥がしながら、受話器の向こうの親父の声に集中する。
「晴美さん、に…っよろしく伝え、と、いて」
『ああ、分かった。また電話するからな』
ちゅ、ちゅ…と首筋から胸元に降りて行く歩の唇から逃れるように体をよじりながら、親父に言葉を返していく。
「…じゃ、また…っ」
『…真澄、今日おかしくないか?』
「いやっ…んな、こと…なぃ…!」
早く切ってくれと願いながら力が抜けそうになる手に力を込める。
そんな俺を歩は試すように見つめてきた。