第4章 honey.4
「っ、…ん!」
「はっ…真澄…」
そんな声で囁くな!
近くの壁に押し付けられるようにして、俺と歩は唇を合わせていた。
唇を割って入り込んでくる歩の舌がすぐに俺の舌に絡まって、否応なしにピクリと体が反応する。
『…どうかしたのかー?』
間延びした親父の声が聞こえて、慌てて閉じていた瞳を開けると歩の手には受話器が握られたままだった。
電話繋がったままじゃねーか!
「ちょ、こら!…んぅ」
「んっ。真澄…」
完全にスイッチが入ってしまった歩を横目に、どうにか電話が切れないかと手を伸ばすも、あと一歩の所で及ばない。
『歩ちゃーん?…真澄ー?』
ほら!親父も不審がってる!!
背中をバシバシと叩くも、歩は俺の話など聞いていないように深く口唇を合わせてくる。
「っん、…ふっ」
「ん。…賢治さん?ちょっと手が滑って受話器落としちゃいました」
まさか受話器の向こうで俺と歩が唇を合わせていたなどと考えつかないだろう親父は、歩の嘘を間に受けて言葉を繋げていく。
「…っ!」
バレてたらどうしてたんだよ、こいつ!
ごしっと腕で唇を拭って、俺は力が抜けそうな足に力を入れた。