第4章 honey.4
にこにこと笑みを浮かべ話し込んでいる歩に視線を送る。
それに気づいた歩は人差し指を唇に当ててニヤリと笑った。
「……っ!」
その仕草に全てを悟った俺はギリっと奥歯を噛み締める。
歩は俺が親父に何を聞くのか分かったのだ。
それは逆に親父が歩の正体を知らないと言うことになる。
「……」
さすがに晴美さんは歩の母親だから正体は知ってるんだろうな、と歩と親父の声を背後に考えていた時だった。
「真澄ってば!」
「あ?」
思いふけていたので歩の声に気づかなかった。
歩は受話器を耳に当てたままでこちらを伺っている。
「…どうしたの」
「いや、別に」
『歩ちゃん?』
「あ、何でもないです」
俺を一瞥した歩はそのまままた親父との会話に花を咲かせ始めた。
…後で歩にそれとなく聞いてみるか。
ふいっと視線を逸らしたその一瞬。
それが命取りになることは…。
ガ、タン…ッ。
「んっ…?!」
分かってたはずだった。