第4章 honey.4
そろそろ上がろうかとした時、すりガラスの扉の向こうで微かな物音がした。
「?」
少し前かがみに立ち上がった瞬間、ガラッと風呂の扉が開いて俺は慌てて湯船に体を沈ませる。
「真澄ー!背中流してあげる!」
「今すぐ出てけっ!」
喜々として風呂場に乱入してきたのは、長い髪を後ろにひとまとめにして腕まくりをした歩だった。
「えー?せっかく髪も上げたんだから、流してあげる」
「結構です!」
いつも長い髪が頭のてっぺんでお団子にされていて、雰囲気がなんとなく変わっている。
やっぱ地毛なんだな…。
ここまで伸ばすとなると、そうとう長い時間がかかる。
いつからこいつは女装を始めたのだろうか。
いや、今はそれよりも…。
「のぼせそうなんだから、早くでてけっ…」
肩までお湯に浸かっている為、頭がぼーっとしてきた。