第3章 honey.3
「………」
「真澄?」
さっき彰に言われた言葉がぐるぐると頭の中を回るが、その時ふと、歩の体がすっかり冷たくなっていたことに気づいた。
「お前、なんでこんなに体が冷たいんだ?」
「…真澄のこと探し回ってたからかな?」
それにしても冷たくなり過ぎてる。
それと、言葉の前にあった微かな間と一瞬泳いだ瞳。
…こいつ何か隠してる?
深く追求しようか迷った俺の考えを読み取ったのか、歩は少し困ったように笑うとそのまま顔を隠すように顔を俯けた。
「真澄があっためてくれる?」
俺の制服に額をくっつけた歩のくぐもった声が聞こえる。
それが酷く悲しい声色で。
ためらいながら上げた俺の腕は数秒宙を彷徨ってから、歩の背中に回された。
これは弟を慰めるためだと自分に言い聞かせて、兄の役目だと義務付ける。
歩の体に体温を奪われていくことを感じながら、俺はゆっくりと目を閉じたー…。
【END】