第3章 honey.3
彰を教室に置いたままにして、俺は廊下を歩いていた。
とっくに放課後になっている校内に残っている生徒の数はまばらで、窓の外からは運動部のかけ声などが聞こえてくる。
帰宅部の俺には関係ないことだ。
スタスタと歩いていくと、曲がり角からパタパタと軽やかな足音が聞こえてくる。
忘れ物でも取りにきた生徒だろうか?
さして気にもとめず、窓から見えるグラウンドに視線を向けたままで足を進める。
黄色いボールを追いかけるテニス部員に、準備体操をしている陸上部。
サッカーボールを蹴飛ばし練習しているサッカー部員に野球…。
「真澄っ!」
いきなりかけられた声に、俺の思考は停止した。
慌てて前を見ると、茶色い髪をふわふわと靡かせながら走ってくる女子生徒。
「あ、歩?!」
そのままダイブしてきた歩はすりすりと猫みたいに俺に頬を寄せる。
「下駄箱に靴あったから、探しにきたの。一緒に帰ろ?」
スルリと自然に指を絡ませてきた歩の姿は、どこからみても女の子で。
…近頃の女装男子のレベルは高いな。