第3章 honey.3
ふぅ、と息を吐くとそれまでぐちゃぐちゃしていた頭が、冷静を取り戻した気がした。
「俺に男とヤる趣味はない」
「そーだね、そろそろ帰る?」
女しか抱いたことはない。
そしてこれからも、男に抱かれることも男を抱くこともない。
ないはずだ。
しかし、どうしてか…。
体が…歩の熱を思い出して疼く。
やっぱ近いうちにでも女捕まえるか。
「……まっすん?」
しばらく女の柔らかな肌とは疎遠になっていたから、溜まってるんだろう。
そう結論付けて、俺は顔を上げ…いや、正確には上げようとした。
目の前にいた彰が指先で俺の顎をくいっと持ち上げて、顔が真近に近づ…。
……ちゅっ。
一瞬触れた唇はすぐに離れて、目の前には彰の顔。
…こっ、の…。
「ふざけんなよ彰っ!!」
「だってなんか柔らかそうだったから思わず」
ケラケラと笑う彰は怒鳴る俺なんかにはビビる気配もない。
俺はゴシゴシと口を袖で拭った後で、彰のつま先を踏みつけてやった。
「いっで!!」