第1章 honey.1
「なんで、こーなったんだ…」
自分の部屋のベッドの上で俺はうなだれていた。
俺の知らない所で再婚の話は進んでいたらしく、この部屋の隣にはすでに歩ちゃんの部屋があった。
もちろん家具も運び済み。
親父達は俺の制止を振り切って、今頃は南国の国で夏を満喫中なんだろう。
寒さが苦手な親父が行きそうな所だな。
部屋を温める暖房の音を聞きながら大きなため息を吐くと、同時にノック音が響いた。
「あの…」
部屋の外から聞こえる声に体を起こし扉を開けると、そこには歩ちゃんが立っていた。
「どうした?」
「晩ご飯作ったので、食べませんか?」
そう言えばもうそんな時間か。
「作らせちまって悪いな」
「いいえ。気にしないで下さい」
こんな純粋な子を置いていくとはたちが悪い。
パチンと部屋の電気を消して歩ちゃんの後ろ姿を追って一階へ降りると、リビングには湯気を立てるシチューが置かれていた。